
かつて幕内を席巻した炎鵬。小柄な体で巨大な力士をなぎ倒す姿が印象的な炎鵬ですが、最近では「引退」という言葉が囁かれるようになっています。
2025年7月の名古屋場所では、幕下の土俵で再び膝を負傷し休場となったことで、ファンからは心配の声が上がっています。
本記事では、炎鵬のこれまでの経歴を振り返りながら、引退と言われる深刻な理由や現在の状態について、詳しく解説していきます。
炎鵬の経歴と人気の理由
炎鵬がこれほどまでにファンから愛される理由は、その「規格外」の相撲人生にあります身長169cm、体重95kg前後という体格は、力士の中では非常に小柄です。
しかし、そのハンデを逆手に取り、相手の懐へ瞬時にもぐり込むスピードと、多彩な技を武器に、角界を駆け上がりました。小柄な体で自分より遥かに大きな相手に立ち向かう姿は、多くの人々に勇気を与えています。
項目 | 詳細 |
四股名 | 炎鵬 友哉(えんほう ゆうや) |
本名 | 中村 友哉 |
生年月日 | 平成6年10月18日 |
出身地 | 石川県金沢市 |
身長・体重 | 169cm・95kg(キャリア平均) |
所属部屋 | 伊勢ヶ濱 |
初土俵 | 平成29年3月場所 |
新入幕 | 令和元年5月場所 |
番付の変遷(概要) | |
2017~2019年 | 前相撲からわずか2年で幕内へ 三段目まで3場所連続全勝優勝を記録 |
2020~2022年 | 幕内上位で奮闘するも、徐々に相手の研究が進み、負け越しが増え始める 番付も少しずつ下降 |
2023年 | 5月場所で致命的な大怪我により長期離脱を余儀なくされ、番付が急降下 |
2024年 | 7月場所に序ノ口で復帰 一歩ずつ番付を戻していく、苦難の道のりが始まる |
2025年 | 3月場所に幕下へ復帰 5月場所は負け越し、7月場所は怪我で途中休場と、厳しい状況が続く |
「炎鵬」引退説の理由は?
炎鵬の引退説が囁かれる理由は、2023年5月場所で負った大怪我にあります。当時、十両三枚目だった炎鵬は初日から10連敗を喫し、休場。当初の診断名は「頚部椎間板ヘルニア」と発表されましたが、後に「脊髄損傷」が明らかになりました。
「脊髄損傷」とは?
脊髄損傷とは、脳からの指令を全身に伝える中枢神経の損傷であり、アスリート生命はもちろん、日常生活すら脅かすほどの大怪我です。
医師からは「日常生活に戻るため相撲はあきらめてください」と、事実上の引退勧告を受けたと報じられています。入院中の2週間は寝たきりの状態だったといい、その深刻さがうかがえます。
この「脊髄損傷」という事実の重みこそが、引退説の根源です。元プロ野球選手の赤星憲広選手が同じ中心性脊髄損傷を理由に引退を決断した例もあり、ファンが炎鵬の身を案じ、「もう無理をしないでほしい」という声も多いようです。
絶望からの復活劇!序ノ口からの再出発
医師から非情な宣告を受けた炎鵬ですが、闘志は消えませんでした。
長期休場により番付は幕下、三段目と降下し、2024年7月には番付最下層に近い「序ノ口」まで落ちてしまいます。元幕内力士がここまで番付を落とすのは、極めて異例のことです。
しかし、炎鵬はメディアの取材に対し、
- 「引退は1ミリも考えていない」
- 「入門した頃に戻るだけ」
など、力強く語り、その言葉通り、2024年7月場所の序ノ口の土俵から、長い復活への道が始まります。なかなか取組を観ることができないファンのために、YouTubeなどでは多くのファンが炎鵬の取組動画を投稿し、復活を後押ししました。
序ノ口復帰後の場所別成績
場所 | 番付 | 成績 |
2024年7月場所 | 序ノ口 | 6勝1敗 |
2024年9月場所 | 序二段 | 6勝1敗 |
2024年11月場所 | 三段目 | 6勝1敗 |
2025年1月場所 | 三段目 | 6勝1敗 |
2025年3月場所 | 幕下 | 6勝1敗 |
2025年5月場所 | 幕下 | 3勝4敗 |
炎鵬は、着実に白星を積み重ね、2025年3月にはついに幕下の地位まで番付を戻すという、驚異的な復活劇を見せました。
【再びの試練】名古屋場所での負傷と現在の状態
序ノ口から這い上がり、再び関取の座を目指す炎鵬でしたが、幕下復帰後の2025年5月場所では3勝4敗と負け越し、上位の壁に直面します。
そして迎えた同年7月の名古屋場所、押し出されて土俵下に転落した際に左膝を強く打ち、負傷。翌日、日本相撲協会は9日目からの休場を発表し、この場所を2勝2敗3休という結果で終えました。この新たな怪我は、彼の根本にある「脊髄損傷」と無関係ではないと考えられています。
炎鵬におそいかかった負傷の連鎖
炎鵬自身も、首の怪我の後遺症による筋力低下を語っていました。
致命的な大怪我の影響で体のバランスが崩れ、他の部分に負担がかかり、新たな怪我を誘発するという「負の連鎖」に陥っている可能性があります。
だからこそ、今回の休場はファンにとっても大きな不安要素となり、引退を心配する声が上がるようになったようです。
師匠・伊勢ヶ濱親方(元照ノ富士)の存在が与える影響
現在の炎鵬を語る上で、師匠である伊勢ヶ濱親方(元横綱・照ノ富士)の存在は欠かせません。伊勢ヶ濱親方自身、大関から序二段まで陥落しながら、横綱まで登り詰めた「奇跡の復活」を遂げた人物です。「最後まで諦めない」を信条とする師匠の存在は、どん底を経験した炎鵬にとって大きな心の支えでしょう。
プレッシャーに耐えられるかが心配
伊勢ヶ濱部屋には、弟子の尊富士が足に大怪我を負いながら強行出場し、新入幕優勝を飾った例のように、「痛みを乗り越えて栄光を掴む」という過去の経歴もあります。この不屈の哲学が、炎鵬に「自分も諦められない」という逃げ場のないプレッシャーを与えている可能性も否定できません。
また、強靭な肉体を持つ師匠と、スピードと技術で戦う小柄な炎鵬とでは、根本的なタイプが異なります。師匠が成し遂げた復活の道のりが、そのまま弟子に当てはまるとは限らないという現実もまた、炎鵬の現在の苦しい立場を物語っているのかもしれません。
まとめ
ここまで見てきたように、炎鵬に「引退」の二文字が付きまとうのは、闘志が衰えたからではなく、「脊髄損傷」というアスリート生命を脅かす大怪我を負ったという医学的な事実と、その影響からなのか新たな怪我が連鎖している現在の状況にあります。
小柄な体で角界の頂点を目指し、医師に引退を宣告されながらも土俵に戻ってきた不屈の力士。多くのファンが、炎鵬の次の一歩を固唾をのんで見守っています!